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2018年05月25日

法人が破産した場合の税金等の非免責債権の行方-最判H15.3.14判時1821号31頁-

  
   個人破産の免責手続に係る破産法253条にて、破産手続終了後においても

  支払義務が免れない債権が列挙されています。

  いわゆる非免責債権といわれるもので、養育費や租税債権が典型例です。

  

  この破産法253条は、法人が破産したケースでも適用されるのでしょうか?

  非免責債権の趣旨が、例えば租税債権の場合の徴税政策上の配慮など特別

  の政策的な理由から各々定められていることから免れないようにも思えます。


  
  一方、生身の人間である自然人と違い、法が特別に認めた人格であり、破産

  手続終了により跡形もなくなる法人の場合、破産後いったい誰に請求すれば

  よいのでしょうか?


  調査すると、ある最高裁判例を発見しました。

  以下、転記します。

  「会社が破産宣告を受けた後破産終結決定がされて会社の法人格が消滅した

  場合には、これにより会社の負担していた債務も消滅するものと解すべきであり
   
  この場合、もはや存在しない債務について事項による消滅を観念する余地は

  ない。この理は、同債務について保証人のある場合においても変わらない。」

  (平成15年3月14日  最高裁判所第二小法廷  判決)

  上記最高裁判例は、求償権請求事案で本来の争点は別にあり、本テーマが直接

  争われた訳ではありません。但し当該争点に関する判決理由の中で、上記の下線部

  の記述がなされました。上記判決を引用する形で、法人破産の場合は、債務も消滅

  する旨の記載をする概説書もいくつかあります。

   非免責債権を定めた趣旨を考えると、結論に違和感も感じなくはないです。しかし

  法人制度の趣旨や、実際誰に請求するのかという実務的な視点を考慮すると、「法

  人が破産した場合の税金等の非免責債権は請求できない」という結論は妥当では
  
  ないでしょうか。この記事の一番下に、判旨の全文PDF版を貼り付けますのでご興

  味のある方はお読み下さい。  以上

  
  (参考文献)

   今中利昭・今泉純一著

     『実務法律講義5 実務倒産法講義』(民事法研究会、2004年)684頁
  
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Posted by つばめ at 13:08Comments(0)裁判業務

2018年05月24日

NPO法人と一般社団法人なにがどう違う?(特に設立手続を中心に)第4回


   前回と前々回でNPO法人と一般社団法人の設立手続の概要を解説いたしました。

   今回は、両者の違いに焦点をあてて解説致します。また設立手続以外の項目の違い

   についても併せて解説致します。


 (1)設立手続

   ①手続に要する時間

   NPO法人     →  所管庁(県庁や市役所)での手続に多くの時間を要する
                  のが実情です。縦覧期間と審査期間を併せて通常3ヶ月
                  は要します。ただ条例で期間を短縮しているケースがあ
                  り、福岡市などはもう少し早いそうです。

   一般社団法人  →  株式会社の設立手続に極めて似ています。
                  所要期間は、公証人役場や法務局の混み具合によりま
                  すが、早くて1週間程度と思われます。

   ②費用

   NPO法人     →   所管庁や法務局に対しては、一切費用は発生しません。
                  よって、司法書士に依頼せず、当事者自身で行えばほとんど費用
                  を要せず手続できます(出費と言えば住民票ぐらいでしょうか)。

   一般社団法人  →    ・公証人役場への認証手数料として約5万円を要します。
                  ・また法務局への登録免許税として6万円も要します。
    
   ③社員(組織の構成員)

   NPO法人    →   ・最低でも10名は必要。
                  ・またNPO法人の趣旨が、ボランティア団体などの民間公益団体に
                  法人を付与することなので、団体加入の要件に不当な条件を設け
                  ることも禁止されています。
                  ・社員総会での議決権は、1人1票となる。

   一般社団法人  →   ・設立時は最低2名必要。設立後は1名のみも可(役員が社員も兼
                  ねれば社員ゼロでも構わないとされています)。
                  ・社員総会での議決権は、「原則」1人1票となる。但し定款で別段
                  の定めが可能です。
  
   ④役員

   NPO法人    →   理事3名・監事1名が必須です。監事に関しては法人の活動に従事
                  していない中立的な方を選ぶ必要があります。

   一般社団法人 →     理事1名のみも可
                  但し理事会を設ける場合は、理事3名・監事1名とNPO法人と同じ
                  役員構成となります。
  
                
   上記が設立手続を中心とした両者の違いとなります。上記以外で重要と思われる箇所
   を下記に解説します。


   ⑤事業内容

   NPO法人   →    法律で定められた20分野の活動が主目的となる必要があります*1。
                  よって例えば小売業や出身高校の同窓会など営利もしくは共益的
                  な活動が主だと、そもそも所轄庁から認証が得られません。
                  但し主目的の事業に支障が無い限り付随して行うことは可能です。

   一般社団法人 →    違法または公序良俗に反しない限り、特に制限はありません。

   ⑥情報公開

   NPO法人   →    ・事業年度終了後3ヶ月以内に事業報告や決算報告を所管庁に行う
                  必要があります。上記書類は公表されます*2。
                  ・役員や定款を変更した際にも届出が必要です。
                  ・以前は資産の総額の変更登記が毎年必要でしたが、平成28年改
                   正で不要になりました。代わりに貸借対照表の公告義務が課され
                   ています。

   一般社団法人 →    ・株式会社やNPO法人と同様、事業年度終了後の貸借対照表の公
                   告義務があるのみ。


   ⑦税務

   NPO法人    →      ・法人税法上の収益事業のみが課税対象となる。
                  ・法人住民税の均等割については、免除申請により課税免除となる 
                   ことが多い。

  一般社団法人  →    ・「非営利が徹底された法人」と税務署に認定されれば、法人税法上
                   の収益事業のみが課税対象となる。

  *税務について詳しくは税理士や税務署にお問い合わせ下さい。


    以上、4回にわたり解説させて頂いたました。2つの法人の概要や違いを少しでも理解
   
     頂いたら幸いです。


 (参考文献)

   宮入賢一郎・森田真佐男 著
         『図解 NPO法人のつくり方・運営のしかた』(日本実業出版社、2007)
     
   城塚健之・堂本道信・山西克幸 著
         『図解 新公益法人の設立・運営・移行のしかた』(日本実業出版社、2008)

   脇坂誠也 著    
         『社会起業家のためのNPO・新公益法人Q&A』(三和書籍、2009)

   登記研究編集室編   『法人登記書式精義 第1巻』 (テイハン、2009)

   登記研究編集室編   『法人登記書式精義 第3巻』 (テイハン、2014)

   後藤孝典・野入美和子・SUパートナーズ税理士法人著
    『事例にみる一般社団法人活用の実務 法務・会計・税務・登記(第2版)』
                                      (日本加除出版、2016)


  *1  特定非営利活動法人促進法 別表(第2条)
     1.保健、医療又は福祉の増進を図る活動
     2.社会教育の推進を図る活動
     3.まちづくりの推進を図る活動
     4.観光の振興を図る活動
     5.農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
     6.学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
     7.環境の保全を図る活動
     8.災害救援活動
     9.地域安全活動
    10.人権の擁護又は平和の推進を図る活動
    11.国際協力の活動
    12.男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
    13.子どもの健全育成を図る活動
    14.情報化社会の発展を図る活動
    15.科学技術の振興を図る活動
    16.経済活動の活性化を図る活動
    17.職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
    18.消費者の保護を図る活動
    19.前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
    20.前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動


  *2  福岡県NPO・ボランティアセンターのホームページでは、提出された活動報告や決算
      報告の内容が掲載されている。ホームページ内のかんたん団体検索などから興味の
ある法人の活動内容などを知ることができる。




  

  




               
     


Posted by つばめ at 17:39Comments(0)商業登記

2018年05月21日

NPO法人と一般社団法人なにがどう違う?(特に設立手続を中心に)第3回


  第3回は、一般社団法人の設立手続と組織構成を解説致します。

 (1)設立手続

   ①定款案の作成
    →2人以上の設立時社員(一般社団法人の社員になろうとするもの。株式会社の発起人
     に相当)が共同して作成する必要があります。

  ②公証人の認証

    →公証人役場の公証人の認証を得て、上記定款が有効になります。その際認証手数料
     として約5万円を要します。


   ③設立時理事等の選任

    →設立総会で選任されます。通常は設立総会を①の時点で行い、定款などと一緒に決
     定することが多いでしょう。

   ④設立登記の申請

    →主たる事務所を管轄する法務局へ登記申請を行います(*1)。なお登録免許税として
     金6万円を要します。

  ⑤登記完了・法人格取得

   
   *1申請書以外の添付書類は以下のとおり 
    (理事会及び監事を設置せず、理事2名のケース)
   
   ①定款
    ②設立時社員の決議書
     (例えば、定款ではなく設立時社員が設立時理事を選任した場合や主たる事務所の
      所在地を定めた場合に添付する)
   ③設立時代表理事の互選に関する書面
     (設立時理事が設立時代表理事を互選した場合に添付する)
   ④設立時理事及び設立時代表理事の就任承諾書
     (②または③の会議の席上で、被選定者が就任を承諾した場合「就任承諾書は②ま
     たは③の記載を援用する」で省略可)
    ⑤設立時理事の印鑑証明書

    ・代理人申請の場合は委任状が必要です。

 前回のNPO法人の場合と比べて、手続自体はかなり省力化されているといえます。
 
 次回は両者を比較して、より相違点を明らかにしていきます。


 
 当ブログは、過去に3年ほどNPO法人の役員経験のあった司法書士による
 
 司法書士事務所の公式ブログです。

 設立相談などありましたら当事務所まで是非ご一報を。なお初回相談は無料

 でさせていただいております。



     


Posted by つばめ at 15:28Comments(0)商業登記

2018年05月18日

NPO法人と一般社団法人なにがどう違う?(特に設立手続を中心に)第2回

 
 第2回は、NPO法人の設立手続と組織構成について取り上げます。

(1)設立手続

 ①発起人会の開催
 
  →設立企画者(発起人といいます)が集まり、定款や設立趣意書など設立認証に必要な書類
   の原案を作ります。

 ②設立総会の開催

  →設立当初の社員(組織の構成員、株式会社でいう株主みたいな立場の人です)が集まり
    法人設立の意思決定を行い、定款や設立趣意書など設立認証に必要な書類を審議決定
    します(*1)。

 ③設立認証の申請

  →所轄庁(政令指定都市や都道府県)へ申請書類を提出。形式上の不備がなければ受理
   されますが、提出前に打合せを行えば、申請後の手続が比較的スムーズに進むでしょう。

 ④申請書類の縦覧期間(1ヶ月)
 
  →申請書類を一般市民に公開します。縦覧期間を設ける趣旨は、申請団体が不適切な団
    体ではないか一般市民のチェックを受けるためとされています。以前の縦覧期間は2ヶ月
   でしたが、平成28年改正で短縮されました。地方自治体によっては、縦覧期間を条例で
   短縮しているケースもあります。

 ⑤認証・不認証の決定(縦覧期間終了後2ヶ月以内)
  
  →認証の場合は、認証書が発行されます。不認証の場合は、理由を示した書類が発行さ
    れます。④と併せて考慮すると、認証手続に通常3ヶ月はかかることになります。

 ⑥設立登記の申請
  
  →認証書が到達して2週間以内に、主たる事務所を管轄する法務局へ登記申請を行い
    ます(*2)。

 ⑦登記完了・法人格取得

  →完了後、所轄庁へ登記完了報告を行う必要があります(その際、法人の登記事項証
   明書と財産目録も要提出)。

 *1認証に係る必要書類は以下のとおり(特定非営利活動法人促進法第10条)
   
   ①申請書(所轄庁のHPにひな形が準備されていることも多いです)
   ②定款
   ③設立趣意書
   ④役員名簿
   ⑤役員の住民票(原本)
   ⑥設立総会議事録(設立の意思決定を証する議事録のことです)
   ⑦役員の就任承諾及び誓約書の写し
   ⑧10名以上の社員が掲載された社員名簿
   ⑨設立初年度及び翌年度の事業計画書
   ⑩設立初年度及び翌年度の活動予算書
   ⑪法人が宗教・政治団体や暴力団関係の団体で「ない」ことの確認書

 *2 申請書以外の添付書類は以下のとおり
   
   ①定款
   ②代表権を有する者の資格を証する書面
   →就任承諾および誓約書のことです。
   ③資産の総額を証する書面
   →設立当初の財産目録を添付します。
     法人によりますが、通常が財産ゼロのケースがほとんどでしょう。
   ④所轄庁発行の設立認証書

  ・代理人申請の場合は委任状が必要です。
  ・定款で主たる事務所の所在地を最小行政区画(例えば、福岡市博多区など)まで
   しか定めていない場合、本店所在地を決定したことを証する書面(理事会議事録)
   も必要です。

 
 (2)組織構成
                社員総会
             (最高意思決定機関)  
           *最低10名の社員が必要。

                  ↓

                   役員
          *理事3名以上、監事1名以上必要。
          *社員の中から選んでかまいません。
   
 
 
 次回は、一般社団法人の設立手続をご紹介します。
 
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Posted by つばめ at 10:31Comments(0)商業登記