商業登記の仕事は、簡単に言えば会社の登記簿を変更する仕事です。登記簿の
記載事項(登記事項と言われます)の一つに、資本金があります。
資本金を減らす手続のことを、資本金の減少登記(略して減資登記)といいます。
官報公告などの債権者保護手続に約1ヶ月を要するなど商業登記の中では、一定
の時間がかかる手続となっています。登録免許税(登記をする際に法務局に支払う
手数料のこと)は金3万円です。
一方、一般の方にとって1番なじみのある商業登記は役員変更登記でしょう。役員
変更登記の登録免許税は、減資登記と同じく通常金3万円です。但し資本金1億円以
下の会社の場合は、金1万円という特例があります。
以前私が担当した案件で以下のようなものがありました。
①減資登記と役員変更登記を同時に申請
②減資登記の結果、資本金が1億円以上→資本金1億円以下に変更
上記①②のケースで、役員変更登記の登録免許税はいくらになるか
商業登記の場合、異なる登記事項に関するものを同時に申請することは頻繁にあります。
上記①②のケースで、減資後の資本金を基準にすると、金1万円となり、顧客にとっては望
ましい結果になります。株主総会にて減資の決定を先に行い、その直後に役員変更の議決
をする訳です。
一方、申請時点での登記簿の記載事項(つまりは減資前の資本金)が基準になるのでとの
意見も賜りました。
こうなると、管轄法務局に尋ねるしかありません。上記内容を登記相談票として作成し
法務局から翌日回答を得ました。回答内容を簡潔に記すと、同時申請は可能だが減資
と役員変更の効力発生日が同一だと、登録免許税は金3万円となるというものでした。
上記回答やその際のやりとりを踏まえ、減資の効力発生日を役員変更(例、辞任)の効力発
生日の前日にし、上記の日付にて会社としての機関決定を同時に行う形にしました。
もう少し具体的に説明すると、まず株主総会の第1号議案として総会日を効力発生日とする
減資の決議を行い、第2号議案として総会日の翌日を効力発生日とする条件をつけた役員
変更を決議しました。
上記決議に基づく株主総会議事録を添付書類とし、役員変更登記の登録免許税を金1万円
として登記申請を行いました。結果はもちろん補正なしでした。
件名にようなケースは、管轄法務局によって、また同じ法務局でも人事異動に伴う構成員の
変更で取扱いが変更になるものと予想されます。レアケースでもあるので、登記申請する場合
は、その都度管轄法務局に調整されることをお勧めして、本記事を終了します。
以上