商業登記にも様々な項目があります。メジャーなのが株式会社の設立登記、役員変更
登記や本店移転登記などの株式会社関係です。最近では合同会社関連や一般社団法
人関連も増えているように思います。
しかし商業登記は、いわゆる法人登記だけではありません。法人化していないいわゆる
個人事業主が、登記をする場面もあります。
今回はその中でこれまで私が2回ほど受任した支配人登記についてご紹介致します。
■依頼のきっかけと背景
2件とも行政書士さんからの紹介でした。依頼者された方はどちらも建設業の方です。
背景として、建築業の許可申請のしくみがあるようです。 許可申請の要件に、一定の
業歴がある人を経営業務管理責任者として設置することが要求され、申請者自身が
業歴の要件を充たしていない場合、別途業歴のある方を経営業務管理責任者としなく
てはならないようです。経営業務管理責任者は、法人の場合は取締役、法人でない場
合は支配人とされており、支配人である旨を証明するため登記をすることが要求されて
います。
つまり、建築業の許可を取得したいけれども、業歴が短くかつ法人化するまでも無い
場合、支配人登記が必要となるという訳です。
■登記事項や作成書類など
登記事項は以下のとおりで、法人登記と比べシンプルな内容となっています。
・支配人の住所・氏名
・商人の住所・氏名(個人事業主の情報が登記されます)
・支配人を置いた営業所
(営業所が個人事業主の住所のみの場合、商人の住所を登記します)
次に、登記に必要な書類は①委任状のみです。委任状に上記登記事項を記載
します。記載無い場合、登記官が確認できないため補正になるでしょう。
通常個人事業主が別途登記をしていることは多くないでしょうから、①と同時に
②印鑑届出書と③印鑑カード交付申請書も提出することが多いと思われます。
また登記申請には直接関係しませんが、私は事実関係の確認のため、④支配人
選任決定書を個人事業主から受領し、⑤就任承諾書を支配人から受領しています。
■他の方法と比べたメリットとデメリット
最大のメリットとして、法人の場合と比べ費用が安あがりという面があります。
株式会社設立登記の登録免許税(登記に係る税金)は15万円でかつ公証人役場への
手数料が別途約5万円、計約20万円もかかります。合同会社の場合でも6万円(すべて
登録免許税。公証人役場への手数料は不要)かかります。一方支配人登記の登録免許
税は3万円と合同会社の半分で済みます。デメリットとして、商人が許可の更新前に死
去した場合、相続されないことが挙げられます(法人の場合、社長が亡くなっても許可に
影響はないようです)。
■その他
昨年建築業法の改正があり、経営業務管理責任者の制度も変わるようです。詳細は
専門外なのでご紹介できませんが、何らかの影響があるかもしれません。
以上