また最近更新が空いてしまいましたが再開します。
今回取り上げたい記事は、会社形態の一つ、「合資会社」に関する登記手続に
についてです。あまりお目にかけないマイナー分野ではありますが、近時増加し
ている「合同会社」でも似たような事情を抱えているので注意が必要です。
1.問題の所在
「みなし種類変更」が主に問題となるのは、合資会社の社員(株式会社で言う
株主兼取締役に近い存在です)が死亡したときです。通常死亡後相続人が会社
の持分(株式会社でいう株式です)を承継すれば、承継した相続人が社員となり
ます。しかし平成18年施行の新会社法では、定款に持分承継の定めがないと
持分を承継できないと規定されました(608条1項)。そのため、定款に持分承継
の定めが無い場合不都合が生じることがあります。具体例で考えてみましょう。
2.具体例
・つばめ「合資会社」(無限責任社員A・有限責任社員B)
(定款に社員死亡時の相続人による持分承継の定めはない)
1)無限責任社員Aが死亡したケース
① 無限責任社員不存在となる
↓
② 有限責任社員のみとなるため、法的には即時につばめ「合同会社」となる。
2)有限責任社員Bが死亡したケース
① 有限責任社員不存在となる
↓
② 無限責任社員のみとなるため、法的には即時につばめ「合名会社」となる。
上記のように、会社形態が、「合資会社」から「合同会社」または「合名会社」へ即時に変更
されることを「みなし種類変更」と言います。上記ケースでもとの会社形態に戻したい場合でも
一旦「みなし種類変更」の発生を登記簿に示す必要があります。
3.「みなし種類変更」の登記手続
具体的な登記手続は以下のとおりです。
① 合同会社(もしくは合名会社)への種類変更登記手続
② (無限責任もしくは有限責任)社員の加入登記
③ 合資会社への種類変更登記手続
以上の3段階もの登記手続が必要となります。
②の社員加入の登記手続については、合同会社に「みなし種類変更」となった場合には
無限責任社員の加入、合名会社に「みなし種類変更」となった場合には有限責任社員の
加入となります。
4.さいごに
定款に相続人による持分承継規定がないがために、場合によっては3のような想定外の
登記手続が必要になってしまいます。本記事をきっかけに、御社の定款を一度点検して
頂けると幸いです。なお月報の記事では、旧商法時代から続く合資会社のケースについても
取り上げられていますが、更にマイナーな論点のため本記事では割愛させて頂きます。
以上