2021年05月17日

合資会社のみなし種類変更について(最近の月報記事から)  

    
     また最近更新が空いてしまいましたが再開します。

     今回取り上げたい記事は、会社形態の一つ、「合資会社」に関する登記手続に

   についてです。あまりお目にかけないマイナー分野ではありますが、近時増加し

   ている「合同会社」でも似たような事情を抱えているので注意が必要です。


  1.問題の所在

     「みなし種類変更」が主に問題となるのは、合資会社の社員(株式会社で言う

   株主兼取締役に近い存在です)が死亡したときです。通常死亡後相続人が会社

   の持分(株式会社でいう株式です)を承継すれば、承継した相続人が社員となり

   ます。しかし平成18年施行の新会社法では、定款に持分承継の定めがないと

   持分を承継できないと規定されました(608条1項)。そのため、定款に持分承継

   の定めが無い場合不都合が生じることがあります。具体例で考えてみましょう。

  2.具体例

     ・つばめ「合資会社」(無限責任社員A・有限責任社員B)
     (定款に社員死亡時の相続人による持分承継の定めはない) 
 
     1)無限責任社員Aが死亡したケース
 
       ① 無限責任社員不存在となる
                ↓
       ② 有限責任社員のみとなるため、法的には即時につばめ「合同会社」となる。

     2)有限責任社員Bが死亡したケース
 
       ① 有限責任社員不存在となる
                ↓
       ② 無限責任社員のみとなるため、法的には即時につばめ「合名会社」となる。

   上記のように、会社形態が、「合資会社」から「合同会社」または「合名会社」へ即時に変更

  されることを「みなし種類変更」と言います。上記ケースでもとの会社形態に戻したい場合でも

  一旦「みなし種類変更」の発生を登記簿に示す必要があります。
 

  3.「みなし種類変更」の登記手続

   具体的な登記手続は以下のとおりです。

  ① 合同会社(もしくは合名会社)への種類変更登記手続

  ② (無限責任もしくは有限責任)社員の加入登記

  ③ 合資会社への種類変更登記手続 
   
   以上の3段階もの登記手続が必要となります。

   ②の社員加入の登記手続については、合同会社に「みなし種類変更」となった場合には

  無限責任社員の加入、合名会社に「みなし種類変更」となった場合には有限責任社員の
  
  加入となります。

  4.さいごに

   定款に相続人による持分承継規定がないがために、場合によっては3のような想定外の

  登記手続が必要になってしまいます。本記事をきっかけに、御社の定款を一度点検して

  頂けると幸いです。なお月報の記事では、旧商法時代から続く合資会社のケースについても

  取り上げられていますが、更にマイナーな論点のため本記事では割愛させて頂きます。


                                    以上
     



同じカテゴリー(商業登記)の記事
 外国人や外国在住日本人の本人確認書類について(最近の月報記事から) (2021-06-20 19:28)
 個人商人の支配人登記 (2020-05-31 11:58)
 減資登記と役員変更登記を同時に申請する場合の登録免許税について~資本金が1億円以下になるケースの登録免許税はいくら?~ (2020-04-24 18:58)
 役員変更登記に添付する本人確認書類の注意点~運転免許証の写しが表面だけだったらどうなる?~ (2020-04-20 18:52)
 NPO法人と一般社団法人なにがどう違う?(特に設立手続を中心に)第4回 (2018-05-24 17:39)
 NPO法人と一般社団法人なにがどう違う?(特に設立手続を中心に)第3回 (2018-05-21 15:28)

Posted by つばめ at 18:58│Comments(0)商業登記
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。